「くくくく」
2年前の夏、僕はココロが踊っていた。
転職した時の退職金の何割かを嫁からピンハネし、自分の口座に移すことに成功したからだ。
「よし、これを元手に株でも買って大金持ちになってやる」
早速、ネット証券の口座開設。
僕はカネを増やせる方法にココロが踊っていた。
遂に、小遣い制からの脱却だ。
少なくとも、資産は増え続けカネに困ることはないだろう。
まず僕が買ったのは、とあるネットゲームのベンチャー企業の株だ。
50万円で買えるだけ買った。
次の日には2万円の儲けになっていた。
小遣いの何割かが一日で手に入った。
コレはすごい…資産運用万歳だ。
ちなみにこの株を買った理由は、「株で買っている人から勧められたから」だ。
特にその会社の事を調べたわけではない。資産状況も、業績も、成長性もへったくれもない。
ただ、「その人が勧めた」からだ。
それ以降、その人が勧めたモノは全て買うことにした。
その人からしたら、ポートフォリオの何分の一にしか過ぎず、勝手も負けても問題ない金額であったかもしれない。
が、特に調べもしない僕からしたら、そのオススメ株はその人からの「金言」のように聞こえていた。
その会社の株が注目だったのは、新作のスマホゲームがリリースされる予想だったからだ。
ゲームがリリースされると、株価は暴騰。更にゲームは世界展開されると言う情報があったので、もっと上がるだろうと言う予想の下にあろうことか信用取引で6倍のレバレッジをかけた(確か10万円だから60万円分か)。
が、先日の暴騰は世界展開を織り込み済みであり、それ以上上がる事はなかった。
すぐに損切りすればよかったのだが、投資マインドもへったくれもなかった為に、「いつかは上がる」と信じ、1週間で25万円を失った。
もともと金のなかった僕には、これは相当な痛手だった。
サラリーマンとしての行動や仕事はそれなりだが、こと副業や投資に関しては、信じられないぐらい頭が回らない。
いわゆる、情弱の行動様式そのものである。
情弱の行動様式
・儲け話にはすぐ飛びつく。
・特に調べもしない。
・結果がいい時には、必要以上に情報提供者を崇める。
・結果が悪いと、その人をトコトンこき下ろす。一つでも当てはまるなら注意
— Kaz (@12_vagabond) 2017年8月15日
そう、何を隠そう、このツイートは自分に向けたものに過ぎないのだ。
さすがに相手をこき下ろす事はしないが、自分の思考を交えず、相手の言葉を必要以上に信じた事が招いた結果である。
残念ながら、これでは投資をする資格などない。
株を始める前に一冊だけ買った初心者向けの本をもう一度、読んでみた。
すると、そこにはやってはいけない事、やらなきゃならない事がハッキリと書いてあるではないか!
損切りの大切さや、利確の仕方、その他全て、僕がやった事の反対の事が書いてある。
結局、そこに書いてある事など、その場で頭で理解できても、行動し、感情が揺れ動くぐらいまで体験しないと「腑に落ちた」と言うところまでは理解出来ていないと言う事だろう。
この時、僕は25万円を失って初めてその事に気付いたワケだ。
どうやら僕に株式投資は向かなかったようだ(勉強しろ)。
よし、じゃあFXだ。懲りない僕は、また短絡的にそんな事を考えた。ムダに行動力だけあるのが悲しい。
為替は株よりもマーケットが大きい。仕手筋のように恣意的に価格をコントロールする輩も少ない(中央銀行やヘッジファンドは別)。
とある筋から入手したインジケータと言われる(いわゆるロウソク足)ツールをPC上にDLする。
これはなかなか優れたツールで、その通貨が売られすぎや、買われすぎと判断された場合には、売りや買いの指示をしてくれるのだ。
そしてその勝率は70~80%というから驚きだ。
早速、ドルに売られすぎのサインが出ている。
ここで10000円の買いの注文を入れる。
するとチャートがすぐに上向きになる。ある程度上がったところで利確。
5000円の利益だ。
スゴイ、コレならイケる。
ストキャスティクス、MACD、移動平均線、一目均衡表、RSI、CCI、ボリンジャーバンドなどのロジックも一通り勉強した。
FXは相場が荒れる「指標」の時間というものがあるが、それ以外の時間帯は比較的相場が安定していて、思った通りの動きになりやすい。具体的には10時〜12時、18時〜20時だ。
夕方は欧州市場が開いているので、海外の投資家のカネが流入し、難易度は上がる。
しかし、僕には本業がある。勤務時間中に取引をするわけにはいかないので、自ずと夕方からの参戦だ。
この時までにゆるゆると減っていた、タネ銭の10万円は大事に使わなければ…
…それから何回か勝ったり負けたりしながら、資金は3万円ほど増えていった。
スゴイ…このインジケータは最強だ。FXの性質上、6割勝てればトータルで勝ちとなるが、今のところ8割は超えている。
あとはのめり込み過ぎずに、マインドをしっかり保ちながらやっていけばいい。
その時から慢心が生まれた。
実はこのインジケータは、1回目で勝てるとは限らない。
例えば、ある時間に、ドル円が上がりすぎている、と判断された時に、「下(売り)」を指す矢印が表示される。1分後に実際にチャートが下がれば勝ちだが、相場はそんなに甘くなく、2分後に下がる場合がある。そこでも下がらなければ次の1分(3分後)だ。
その間に3回、売りの指示を出しているわけだが、3回目で下がる場合、2回目までに掛けたお金は負けとなる。例えば1000円掛けた場合、2回目までは負けなので−2000円だ。3回目でやっと勝ちとなるので1000勝ててもトータルでは1000円の負けだ。
これでは勝てないのでマーチンゲールという手法を取る場合がある。
これは、いわゆる倍賭けを行うもので1000円賭けてダメだったら2000円、ダメだったら4000円、というものだ。
どこかで勝てれば1000円のプラスにはなる。
慢心していた僕はある夜、友人との飲みの後にFXのアプリとPCを開いた。
ドル円で売りのサインが出ている。10000円を賭ける。
ダメだ、チャートは上げの方向だ。
次の1分で、また売りのサインが出る。
次は25000円を賭ける。
ダメだ、またチャートは上げの方向だ。
再度売りのサインが出る。
じわりと手に汗をかいているのが分かる。
こうなると、もう相場がどうとかは関係ない。
失った35000円を取り戻すことしか頭にない。
よし、50000円だ !
チャートは更に上振れするが、時折下がりそうな動きを見せる。
…しかし、最終的にチャートは上げとなる。
失った。
ものの3分で85000円だ。
口の中がこれまでにないぐらい乾く。
全思考が停止する。
小遣い3ヶ月分が3分で…
パチンコでもきっとこんなスリ方はしない(やったこと無いけど)。
何回アポ取れるんだ…考え出すとキリがない。
もう、考えたくない。
だが、この経験から何かを得なければ。 愚者は経験から学ぶのだ。
株もFXも市場を自分の都合のいいように解釈した結果、大負けした。
僕はマーケットの力を借りなきゃいけなかったのに…
相手の事を考えず、カネを追った結果がこれだ。
冷静に現状を分析しながら、相手(相場)がどう動くかを見て判断する。
これが全く出来ていなかった。
女の子に対しては余裕で出来るのに…
諦めずしっかりしたマインドを身につければ勝ち越せるのかもしれないが、僕にはそこまでする気力も資金も残されていなかった…
こうして僕は相場の世界から身を引き、長期投資に切り替えることにした。
やっぱり世の中、甘くない!ナンパは何も失わないけど、カネを失うと心が荒むよね!
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